『よそ者の会』監督キャスト対談①
- よそ者の会
- 4月18日
- 読了時間: 9分
更新日:4月19日
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🎬 映画『よそ者の会』
2025年5月23日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開!
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上映に先駆けて、このページでは映画をより深く楽しめる特別コンテンツを続々公開予定です!
今回は、パンフレットには収まりきらなかった監督&キャストのスペシャル対談をお届けします!
観る前に読めば期待が高まり、観た後に読めば新たな発見があるかもしれません💡
観る前に読んでも良し、観た後に読み返しても良し!
『よそ者の会』の世界を、さらに楽しんでいただけますように──。
どうぞお楽しみください★

映画『よそ者の会』あらすじ
鈴木槙生は大学の清掃員として静かに働く傍ら、密かに爆弾作りに没頭している。そんなある日、構内で「よそ者の会・会員募集」と書かれたポスターを目にした槙生。入会の条件は、「よそ者」であること。興味を抱き会合に参加してみると、そこには日々の鬱憤や殺伐とした感情について語り合う学生の姿があった。その奇妙な集まりを主催するのは坂田絹子という女子学生。一見普通の学生に見える絹子も、意外な秘密を抱えていて。・・。「どこにいてもよそ者だと感じる」。そんな「よそ者」たちが、ひとつの場所に集まった。
対談者
西崎羽美(監督)、川野邉修一(出演)、坂本彩音(出演)
▼キャスティングのきっかけは、よそ者っぽい顔?
川野邉 : 俺と音ちゃんをオファーした理由って何だろう?
坂本 : たしかに、改めてね。
西崎 : もともと最初は知ってる人にお願いしようと思ってて。新しく知り合う人に演技をお願いするっていうのをあまりしたことがなかったので、ある程度話したことがあって、尚且つ、人となりを誰かを介してでも知れる人がいいなと。そこでまずは美学校のアクターズの方から探して。その中でよそ者っぽい顔をしている方を選んだという感じです。お二人ともお話ししたことがあったので連絡が取りやすいなと思い、オファーをしてみました。
川野邉 : あの日飲み会行ってよかったね。
西崎 : そうですね。川野邉さんとはオファーをする前に飲み会でご一緒したことがあって。
川野邉 : 音ちゃんは?
坂本 : 美学校で羽美ちゃんの作品を見る機会があって、その時に「マジで面白かったです」って伝えたんだよね。純粋にめっちゃ面白かった!と思ったのがほぼ初めてで。その熱量のまま伝えて。
西崎 : 二人とも感想を伝えてくれたんですよね。自分の作品を気に入ってくれたっていう印象も強かったので、そういうのもあって声がかけやすかったです。
坂本 : だから伝えるのって大事ですね。こうやって。
西崎 : そこからつながるご縁もありますよね。
坂本 : ありがたいですね。でも、自分がよそ者っぽい顔だったっていうのは言われたことなかったから嬉しかったんですよ。結構スタンダードな顔だと思ってたから。
西崎 : 私が印象に残る顔の人を選ぼうと思ってたんです。お二人の顔のバランスもありますし。うーん、極論、私の好みですね。完全に。
坂本 : 嬉しい。
川野邉 : ありがたい。
▼映画と演劇の交差点
西崎 : ちなみに、現場でもいいですし、完成版を見たときでもいいのですが、印象に残ったシーンはありますか?
坂本 : 大きい講堂のシーン。私はもともと舞台に出ることが多かったから、映画の撮影に対してちょっと苦手意識があって。どうしてもカメラが近くにあるってなると体が硬直しちゃったり、どこに向けて演技を集中させたらいいのか分からなくなることがあったんだけど、あそこのシーンはカメラを一番下というか、奥の教卓の方に置いて、まず動きを打ち合わせして、自由に動いてみて、ざっくりこういう動きで撮りましょうか?って決めてたじゃないですか。
アクターズコースで習ったビューポイントっていうメソッドがあって。動くまでの間とかスピードとかを変化させながら、相手の動きとコミュニケーションをとって、感覚的に即興で次どう動くか決めてくって感じのものなのね。縦しか動けないとか横しか動けないみたいな拘束がある中で、相手の動きを受け取りながら自分も動いてみるっていう。それをこのシーンで実践出来た感覚があった。これってやっぱり意識を相手に集中させないと成立がしないことなんだけど、単純にカメラと距離があったのも大きかったと思うけど、カメラがそこにあるっていうことを忘れて、のべっちがこう動いたから私はじゃあ次こう行こうかなみたいなことを考えながらセリフを喋ることができたのがすごい楽しかった。完成した映像を見ても、あの赤いワンピース着てるシーンから、自分が目に見えて生き生きしてた。
西崎 : 感情の変化が顕著に出てますよね。
坂本 : そう、それが嬉しかった。というか、映画の撮影の現場でその体験ができたのは、自分の中で大きかったなと思ってます。
西崎 : やっぱりあそこのシーンを言及されることが多いですね。
坂本 : 構図としてみたいな?
西崎 : そうですね。構図としてもそうだし。あとは、シナリオ上で言えばあの動作をする必要もないし、あんなロングショットで撮る必要もない中で、わざと入れたっていうのがすごく良かったみたいな。
坂本 : あーそうなんだ。やっぱメタファーみたいなものがこの映画の中で一個テーマというか、それが一つの魅力だと思うけど、絹子と槙生との心の距離感みたいなものが身体で現れてるように映ってたりとかするのかなと思ったり。
川野邉 : そうですね。
坂本 : 演劇っぽい要素と融合されているのがすごく嬉しくて、やってて楽しかった。
西崎 : あそこのシーンって演劇っぽかったですか?他のシーンと比べたら。
坂本 : 自分がやってる体感は、めちゃくちゃ演劇っぽかったです。
川野邉 : 確かに舞台が映画の中に立ち上がってる感じがあった。
坂本 : あと、演技をするときの体の状態とかが舞台に立った時の状態に近かった。
西崎 : へー、なんか面白いですね。
坂本 : それは演出と、単純にカメラの距離がちょっと離れたところにあったっていう、二つが大きかったと思ってる。
川野邉 : シナリオ的には、あの動きのト書きはなかったもんね。
西崎 : そうですね。あそこのシーンはどう演出しようかみたいなのをずっと考えてたんですけど、いまいちパッとしなくて。その撮影の入る前の週くらいに塩田明彦さんの授業が美学校であったんです。そこで害虫を見ました。害虫に、男女がビルの屋上にある柱のようなものの上を、ただただ歩き回るみたいなシーンがあって。それを見たときに、私やりたいのこれかもしれないと思って。
坂本 : へえー。
西崎 : 二人が無造作に、あみだくじみたいに歩いてるんです。それを見て撮影の直前ぐらいに動作を決めましたね。
坂本 : その羽美ちゃんがやりたいこと、これかもしれないって思った感覚をもうちょっと掘り下げて聞きたいな。難しいかもしれないけど。
▼リアルな演技の存在感
西崎 : あのシーンは物語上はいらないかもしれないですけど、私にとっては重要なシーンだと思ってたので、そこで二人の感情が変わるというか変化が出てほしいなっていうのはありました。全編通してそんなにカットは割ってないんですけど、あそこも引きで贅沢にいきたいなっていうイメージはずっとあったんです。
坂本 : そうなんだね。
西崎 : 贅沢に使いたいけど、観客が飽きずに、緊張感を持って見れるシーンにしたくて。そこでただ歩き回るだけじゃなくてああいう動作をするってなかなかないじゃないですか。日常生活においても。
坂本 : そうだね。
西崎 :あの階段教室であの動きをするって、普通の人ならしない行動だからこそ、それぞれの感情の動きが出るんじゃないかなと思って。
坂本 : のべっちは普段から、映画を自分でも撮ってたり、映画に出る機会も多かったわけじゃない。あそこのシーンって、それこそ逆に抵抗があったりとかってあったの?やってて。
川野邉 : でもあそこって2カットぐらいだったよね?
西崎 : 2カットですね。
川野邉 : だいぶ攻めてるなと思った。あとは演出って結構さ、映画の現場って時間が限られるからあまり贅沢に使えないんだけど、そこの大教室のシーンはすごい時間をかけていろいろ喋れたなと思ってて。
西崎 : 対話をしながらいろいろ決められた感じがします。
坂本 : 本当にめちゃくちゃコミュニケーションは取ってたよね。まず、私たちが一旦やってみて、羽美ちゃんの方からどうですか?違和感ありますか?って聞いてくれて、そこからすり合わせて作っていくっていう工程がものすごいやりやすかったです。単純に楽しかった。
西崎 : いろいろコミュニケーションを取りながらできたのはすごく良かったです。
坂本 : だし、それが出てるなって思う。『よそ者の会』は普段俳優をやってない撮影のスタッフさんとして参加してる方も、結構出演されているじゃないですか。でもそこの演技がめちゃくちゃ良くって。喋りが本当にリアル。見てて余計な情報が入ってこないっていうか、本当にそういう人がいるんだなっていうのが、こんなに伝わることもない。これって俳優をやりすぎてない人だからこそ出せるものだと思ってて。自分の個性を持ちながら役として喋ることは誰にでもできることじゃないんだけど、それが成り立ってるのがすごい多いなと思ってて。さらにのべっちもそういう演技をできる人だから、全く浮いてなくて境目がないのが、田辺・弁慶映画祭で初めて大きいスクリーンで見た時に感動した。
川野邉 : あれ結構ちゃんと演じてるんだけどね(笑)
坂本 : 全員ちゃんと演じてるんだよね。本人性を持ったまま演じることができてる。それをちゃんと映すことができてるっていうのが、説得力っていうかリアリアリティがあった。
西崎 : バランスが良かったですよね。
(続く)
対談者プロフィール
川野邉修一(出演)
1991年5月7日、東京都江戸川区出身。法政大学情報科学部デジタルメディア学科卒業。映画美学校フィクション・コース及びアクターズ・コース卒業。主演を務めた短編映画『泥人』(上野皓司監督/2013)が2014年調布映画祭グランプリを受賞。また、同じく主演を務めた『よそ者の会』(西崎羽美監督/2023)は第18回田辺・弁慶映画祭にてキネマイスター賞を受賞。他の出演作は、『MY LIFE IN THE BUSH OF GHOSTS』(宮崎大祐監督/2024)、『松坂さん』(畔柳太陽監督/2024)がある。また、監督作品『凪』(2017)は21st CHOFU SHORT FILM グランプリ・SKIPシティ国際映画祭入選、『ボクらのホームパーティー』(2022)は大阪アジアン映画祭2022・第30回レインボーリール東京入選。
坂本彩音(出演)
1997年生まれ。東京出身。テレビドラマが好きだった影響で中学生から演劇部に所属。高校生の時にオーディションを受けて出演した劇団ままごと「わたしの星」をきっかけに演劇に関わる仕事をしていきたいと思い、武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科に入学。その後"自分で作れる俳優"というキャッチコピーに惹かれ映画美学校アクターズ・コースに入学、2022年に修了。過去出演作品に、ままごと『わたしの星』 / 情熱のフラミンゴ『ドキドキしていた』 / 小田尚稔の演劇『よく生きろ!』などがある。2024年2月には自主企画『光のモンタージュ』を上演。ワークショップのファシリテーターとしても活動を広げている。
西崎羽美(監督)
2001年静岡県生まれ。大学在学中より映画美学校とのダブルスクールを行い、映画制作を学ぶ。映画美学校フィクション・コース第25期高等科修了。現在は日本大学大学院芸術学研究科映像芸術専攻に在学中。大学院では日本の非商業主義的映画(ATG作品)の研究を行なっている。本作が初めての劇映画。